遺産分割協議とは?やり方や流れについて弁護士が分かりやすく解説

遺産分割協議は、遺産の分け方を決める手続きです。遺言書がないときには、遺産分割協議で遺産の分け方を決めることになります。

「遺産分割協議はどうやって進めるの?」「遺産分割協議には誰が参加するの?」など疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

今回は、遺産分割協議が必要な方に向けて、遺産分割協議の進め方や流れ、遺産分割協議における注意点などを解説します。遺産分割協議でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の遺産をどのように分けるかを法定相続人全員の話し合いで決める手続きです。

被相続人が遺言書を遺していた場合、遺産は遺言書の内容に従って分けられます。遺言書がない場合や遺言書の内容から漏れた遺産があるときには、遺産分割協議で遺産の分け方を決める必要があります。

遺産分割協議には、法定相続人全員が参加しなくてはなりません。法定相続人の一部が欠けた状態で遺産分割協議をしても、協議の内容は無効となってしまいます。

遺産分割協議に期限はありません。しかし、話し合いをしないまま放置すると、遺産の管理が難しくなってしまいます。相続税の申告が必要なケースでは、相続開始から10か月以内の申告期限もあります。そのため、遺産分割協議は、状況が落ち着いたらできる限り早めに行うようにしてください。

遺産分割協議の進め方・流れ

遺産分割協議が完了するまでの流れは、次のとおりです。

  1. 遺言書の有無・内容を確認する
  2. 法定相続人を調査・確定する
  3. 相続財産を調査・評価する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 相続財産の名義変更を行う

遺産分割協議は、正しい手順で行わなければやり直しになってしまう可能性もあります。ここからは、各段階の進め方を詳しく解説します。

遺言書の有無・内容を確認する

遺言書があるときには、遺産分割協議の必要がなくなります。そのため、遺産分割を始める際は、初めに遺言書の有無を確認してください。

遺言書には、3つの種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

自筆証書遺言は、被相続人の身の回りや遺品の中から発見されることが多いでしょう。公正証書遺言が作成されているときには、公証役場の遺言検索で遺言書の有無・内容を確認できます。

自筆証書遺言と秘密証書遺言が見つかったときは、家庭裁判所で検認手続きをしなくてはなりません。勝手に開封すると過料が科される可能性があるので注意してください。

遺言書がないときには、遺産分割協議で遺産の分け方を決めることになります。なお、遺言書がある場合でも、相続人全員の同意があれば遺言書と違う内容で遺産を分けることも可能です。

法定相続人を調査・確定する

遺産分割協議を有効に成立させるには法定相続人全員が参加しなければなりません。そのため、遺産分割協議の前提として、法定相続人の調査・確定が必要となります。

法定相続人を調査するには、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍を確認します。さらに、被相続人の子どもがいる場合は、子どもの戸籍もすべて調査対象です。子どもがいないときには、父母や兄弟姉妹が法定相続人となるので、父母や兄弟姉妹の戸籍も調査します。

戸籍の調査が不十分であとから相続人が発覚したときには、遺産分割協議をやり直さなければなりません。被相続人が複数回婚姻している場合や非嫡出子がいる場合には慎重な調査が必要となるでしょう。

従来、戸籍は、各市町村役場から個別に取り寄せなければなりませんでした。令和6年3月に戸籍の広域交付制度が開始されたことで、現在は、本籍地以外の市町村役場が管理する戸籍も本籍地の役場で一括取得できます。

相続財産を調査・評価する

遺産分割協議を行うには、前提として協議の対象となる遺産(相続財産)の調査・評価をしなければなりません。

相続財産の調査では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も余すことなく把握する必要があります。調査から漏れた財産があると、遺産分割協議全体のやり直しが必要となるケースもあるため注意してください。

調査対象となる相続財産には、次のようなものが挙げられます。

プラスの財産
  • 現金・預貯金
  • 有価証券(株券、小切手など)
  • 動産(宝石、貴金属、骨董品、自動車など)
  • 不動産
  • 財産的価値のある権利(慰謝料請求権、著作権など)
マイナスの財産
  • 負債(借金、ローン、買掛金など)
  • 未払いの税金

不動産や非公開株式などは、財産的価値の評価も必要です。財産的価値を評価するのは一般人では難しいため、相続財産の中に評価を必要とする財産が含まれているときは、税理士や公認会計士などの専門家に相談してください。

相続財産の調査・評価が終わったら、財産目録を作成しておくとスムーズに遺産分割協議を進められるでしょう。

遺産分割協議を行う

遺産分割協議に参加する法定相続人と相続財産の内容が確定したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議では、「誰が」「どの財産を」「どれだけ」受け取るのかを話し合いで決めます。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の同意が必要です。内容に反対する相続人が1人でもいる場合や協議に参加しない相続人がいる場合には、遺産分割協議は成立しません。ただし、相続放棄した相続人については、遺産分割協議に参加する必要がありません。

協議がまとまった際は、必ず遺産分割協議書を作成してください。遺産分割協議がなければ、協議の内容に従った遺産分割手続きができなくなってしまいます。

相続財産の名義変更を行う

遺産分割協議書を作成したら、協議の内容に従った相続財産の名義変更手続きを行います。

預貯金については口座解約と払い戻しの手続きが必要となります。不動産は登記の名義変更手続き、株式については株主名簿の書き換え手続きが必要となるでしょう。

各種名義変更手続きでは、遺産分割協議書や被相続人の戸籍、法定相続人の印鑑登録証明書などが必要となるので、遺産分割協議書を作成する際に準備しておくことをおすすめします。

遺産分割協議がまとまらない場合

遺産分割協議の内容に反対する相続人がいるときには、遺産分割協議はまとまりません。遺産分割協議がまとまらないときには、家庭裁判所の遺産分割調停や審判によって決着をつけます。

親族同士の相続トラブルでは、感情がもつれて解決までに長い年月がかかるケースも少なくありません。遺産分割調停にまで発展したときには、解決までに時間がかかることを覚悟してください。

遺産分割調停は、相続人全員が納得しなければ成立しません。調停が成立しなかったときには、裁判所が審判によって遺産分割の内容を強制的に決定します。

遺産分割協議における注意点

遺産分割協議では、次の3つの内容に注意してください。

  • 必ず遺産分割協議書を作成する
  • 法定相続人に未成年者・行方不明者がいるときの対処法
  • 遺産分割協議後に新たな遺産が見つかったときの対処法

それぞれの注意点について詳しく解説します。

必ず遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が成立したときには、必ず遺産分割協議書を作成してください。

遺産分割協議書を作成しておかなければ、あとから協議の内容が蒸し返されてしまう可能性があります。また、相続財産の名義変更をする際にも、遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押印して印鑑登録証明書を添付して下さい。実印と印鑑登録証明書のない遺産分割協議書では名義変更を受け付けてもらえない可能性があります。遺産分割協議書の書き方は法律では決められていませんが、被相続人の氏名・本籍地、法定相続人の氏名・住所、相続財産の内容と分け方については必ず記載してください。

遺産分割協議書の作成方法について不安のある方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

法定相続人に未成年者・行方不明者がいるときの対処法

法定相続人に未成年者がいる場合、親が親権者(法定代理人)として遺産分割協議に参加します。ただし、親自身も法定相続人であるときには、利害が対立する親は代理人となれません。親自身も法定相続人のケースでは、家庭裁判所の手続で特別代理人を選任してもらう必要があります。

法定相続人に行方不明者がいるときには、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任して、不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。

遺産分割協議後に新たな遺産が見つかったときの対処法

遺産分割協議後に新たな遺産が見つかったときは、新たな遺産について遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議の際は、新たな遺産のみを分割することもできますし、遺産分割全体をやり直すことも可能です。

新たな遺産が見つかったときは、遺産分割協議の方向性について争いが起こる可能性があります。争いが蒸し返されるのを防ぐには、遺産分割協議書に新たな遺産が見つかったときの取り扱いを明記しておくべきです。遺産分割協議書の記載があれば、記載に従って新たな遺産を分割することになるので、争いが起こる心配はありません。

遺産分割協議についてよくある質問

ここでは、遺産分割協議についてよくある質問に回答します。

遺言書があるときでも遺産分割協議はできる?

遺言書があるときでも、相続人全員の同意があれば遺産分割協議で遺言と異なる内容で遺産を分けることができます。

ただし、相続人や受遺者の中に1人でも反対する人がいるときには、遺言の内容に反する遺産分割協議をしても無効です。

遺産分割協議のやり直しはできる?

遺産分割協議は、相続人全員の同意があればやり直すことができます。

たとえば、遺産分割協議のあとで新たな相続財産が見つかった場合や、隠し子が発覚したときには、遺産分割協議のやり直しが必要となるでしょう。

ただし、相続財産を第三者に譲渡しているときには、遺産分割協議をやり直しても財産を第三者から取り戻すことはできません。また、やり直しで相続財産を移転するときには、贈与税が課されます。遺産分割協議のやり直しは、どうしても必要な場面に限定して行うようにしましょう。

まとめ

被相続人が遺言書を遺していないときは、遺産分割協議が必要です。遺産分割協議は、常に相続トラブルに発展する可能性を秘めています。

遺産分割協議を行う際は、相続トラブルを避けるため、手順をしっかり守り、慎重に手続きを進めてください。ご自身での対応が難しいときには、弁護士への相談をおすすめします。

親族同士の話し合いでは感情のもつれから争いに発展する可能性があります。弁護士が代理人となれば、冷静な話し合いによる解決が期待できるでしょう。遺産分割協議でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

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